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勝手に読書感想文。漫画も映画も含みます

タグ: みうらじゅん

  • 『アウト老のすすめ』(みうらじゅん著)の図書分類

    ちょっと前のことですが(50代にとって半年前は「ちょっと前」の範疇です)、「あの本、読みました?」というBSテレ東の番組に、みうらじゅん氏が出演していて、『アウト老のすすめ』というエッセイ集が紹介されていました。

    あの本、読みました?いま話題のエッセイ!みうらじゅん「老い」万城目学「万博」(BSテレ東、2025/10/16 22:00 OA)の番組情報ページ | テレ東・BSテレ東 7ch(公式)

    タモリ倶楽部に出ていたときや、あるいは、いとうせいこう氏や安斎肇氏と共演しているような番組でのMJ(ぼくら、みうらじゅんフリークはこう呼んでいるよ)は安心して見ていられるんですが、「普通」のタレントさんと共演しているときのMJを見ていると、気が休まりません。

    なんか、こう、「絡みにくい人」みたいな空気になっていて。「あの本、読みました?」でも、事故り気味でした。

    みうらじゅん(以下 MJ)「だんだん年取ると、ちょっと「ケンイ コスギ」になるとこあるじゃないですか」

    鈴木保奈美(以下 リカ)「あー」

    MJ「何したわけでもないのに、年取ってるだけで・・・」

    (リカの微妙な表情を見て)

    MJ「あっ『権威 濃すぎ』の話ですよ。ケインじゃないですよ」

    自分が作り出した造語を、さも一般にも浸透しているかのように、会話に織り交ぜてくるMJ。「ケンイ コスギになるじゃないですか?」に対して、「はぁ?」と返してくれればいいんですが、きっと何か真面目なことを言っているんだろうと思って、普通に相槌を打ったりすると、ちぐはぐな会話になってしまいます。

    そうです、これがまさに「権威濃すぎ」現象なのです。若手の頃ならぞんざいにつっこんでくれたのに、権威のせいで、相手は「そうですね」「分かります」「勉強になります」みたいな反応をしてしまい、このような悲劇が起きるのです。

    今後MJを起用しようと考えているテレビ関係者に肝に銘じておいてほしいのは、「MJはまじめな話などしない」ということです。つねにふざけていると思って対応するのが吉です。「つっこめる人」「ひろえる人」に共演していただくのもいいと思います。

    つっこみ役として、より権威の濃い人に一緒に出てもらうのもいいと思います。森繁久弥さんとか、勝新太郎さんとと、内田裕也さんとか。え? あぁ、そうですか。残念です。

    「あの本、読みました?」では、「権威濃すぎ」のことを自ら説明せざるをえない苦境に追い込まれたMJに対して、万城目まきめ学氏が

    万城目「自分で言うのつらいですよね、今のところね」

    とフォローしてくれたので、なんとかなりました。消火はできました。全焼のあとでしたが。

    番組によると『アウト老のすすめ』が売れているらしいとのこと。MJの本は書店の隅でひっそりと売られるものだと思っていたのですが、書店で平積みになっていたり、自治体の図書館のサイトで見てみたら予約待ちになっていたりして、この「らしくない感」 にモヤモヤしました。

    これまた、ちょっと前のことですが(今度は15年前だよ)、川崎市立図書館の児童向けの保健体育のコーナーにこの本が置かれていました。

    その時の衝撃については、こちら(図書館で「正しい保健体育」(みうらじゅん著)の置き場所が間違っていた話: 主張)に書いておりますので、ご参照ください。司書のかたはタイトルだけ見て青少年向けの真面目な本だと思って分類してしまったのでしょうか。おそらく、著者が誰であるかを見落としてしまったのだと思います。

    ただ、しばらくして行ってみたら、児童書のコーナーからはなくなっていました。サブカルチャーのコーナーに移動したのかもしれません。有害図書として廃棄されていないことを祈ります。

    そして、これはほんとに「ちょっと前」の話なのですが、これまた川崎市立図書館で、美術や芸術関係の真面目な本に混ざって、この本が並べられていました。

    「芸術新潮」に連載されていたそうで、分類としてはギリ合っているのかもしれませんが、「はかせたろう」活動などの話も出てくる対談なので、本棚で異彩を放っていました。ちなみに「はかせたろう」とは、下着を穿いていないなら「穿かせたろう」という、ヌード写真に下着を書き足すという活動で、これについては『アウト老のすすめ』にも書かれていました

    『アウト老のすすめ』は、MJが「アウト老」を勧めている本というわけではなく、すすめている話ばかりが載っている本ではなく、「週刊文春」に連載されていたエッセイをまとめたものです。

    普通のエッセイっぽくちょっとしたエピソード話もありますが、架空の漫才、金〇工場のインタビュー、老いるショック・セミナーでの講師と生徒のやりとりなど、妄想系のコンテンツも多いデタラメ自由なエッセイ集です。

    大人向けの話も多いです。と、思ったら週刊文春での連載名は「人生エロエロ」だそうです。なぜそのまま単行本のタイトルに使わなかったのでしょうか。書店でレジに持っていくのが恥ずかしくて、売れ行きに影響がでるからですね。愚問でした。単行本化にあたって書名を変えられた出版社・編集者さんの判断は正しかったようです。

    ふと思ったんですが、みなさん「アウト老」の意味はご存じでしょうか?

    みうらじゅんのザ・チープ」という番組の「#4 拓本」の回で、MJが非常に分かりやすい例をあげておられたので、ここで紹介いたします。

    MJが小学生だった頃、母方の祖父(饗庭蘆穂氏)が定年後に拓本(石碑などの表面に紙を置き、墨で文字や模様を写し取る技法)にはまり、『拓本による京の句碑 上』(当時 4,800円)という本を出版しました。

    お祖父さんは、親戚が集まっている場に、ものすごい量の本を持ってきて、こう言い放ちます。

    「1家庭に2冊以上買って欲しい」

    この、親戚内での「押し売り行為」を、「アウトロー」ならぬ「アウト老」であるとMJは評していました。非常に分かりやすい例ですね。

    さて、この『アウト老のすすめ』は図書館ではどのコーナーにおくべきでしょうか。NDC(日本十進分類法:図書館などでの分類に用いる体系)では、「159 人生訓」などがあります、どうでしょうか。もしくは「367.7 老人.老人問題」でしょうか。それとも有害図書として廃棄されてしまうのでしょうか。