私がサリンジャーの作品を読んだきっかけは、爆笑問題の太田さんがテレビ番組で薦めていたから。どうやら「爆笑問題のススメ」(wikipediaへのリンク)という番組だったようですが、私がサリンジャーを初めて読んだ時期が15,6年前だということを考えると、さらに前に放送されたものがYouTubeかなんかにアップされていて、それを見たのかも。
太田さんは、サリンジャーの『フラニーとゾーイー』と、カート・ヴォネガット・ジュニアの『タイタンの妖女』を紹介していました。紹介している番組をどうしても見たい人は、ウェブで検索すれば出てくるのではないでしょうか。私はまだ読んでいないのですが、『爆笑問題の「文学のススメ」』という本も出ているので、そこでふれているんじゃないかと思います。絶版になっているみたいですが、図書館で借りるか、中古で買えば読めるでしょう。
番組の中では、サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』という短編集にも触れていました。なぜかというと、この中に入っている『バナナフィッシュにうってつけの日』が、グラース家のストーリー(連作短篇のような形になっています)の発端になっているからです。
出版の順序では、『バナナフィッシュ~』 → 『フラニー~』 → 今回読んだ『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』ですが、ストーリーの時系列では、『大工~』(長兄シーモアはまだ生きている) → 『バナナフィッシュ~』(シーモアの自殺) → 『フラニー~』(兄を失った妹の葛藤)という流れになります。
『大工~』は家に文庫本があったので、以前読んだはずなのですが全く内容を覚えておらず、もっと言うと、読んだかどうかも自信がなかったです。が、読んでみると、やっぱり読んでました。
語り手は、シーモアのすぐ下の次男バディで、シーモアの結婚式のために、軍隊(本業は作家だから、たぶん兵役)の休暇をとって、病み上がり(治りきっていない)の体をおして、はるばるやってくるのだけれど、気まぐれとも思えるシーモアの行動により結婚式はドタキャンになり、花嫁側の親戚とたまたま同席してしまい、シーモアのことを悪く言う気の強そうな女性になんだかんだと言われる、みたいな話です。
冒頭で、赤ん坊の頃のフラニーにシーモアが読み聞かせた中国の古典が引用されています。また、タイトルになっているフレーズは、ブーブー(長女、バディの妹)がバスルームの鏡に石鹸で書いた伝言の一部で、その内容はというと、
「大工よ、屋根の梁を高く上げよ。アレスさながらに、丈高き男の子にまさりて高き花婿きたる。先のパラダイス放送株式会社専属作家アーヴィング・サッフォより、愛をこめて。汝の麗しきミュリエルと何卒、何卒、何卒おしあわせに。これは命令である。予はこのブロックに住むなんぴとよりも上位にある者なり」
古典のパロディのようだけど、元ネタが分かりません。あのサッフォーかなと思ったけど、ウィキペディアのサッポーのページを見ても、アーヴィングというファーストネームではありません。「アーヴィング␣サッフォ」で検索してもそれらしいページはでてきません。
シーモアの奥さんになるミュリエルの名前が出てくるので、ブーブーからシーモアへの祝辞であろうということ分かるのですが、それ以外は不明です。シーモアは背が高いのでしょうか?
小説のタイトルとして、この部分を選んだくらいだから、何か深い意味が込められているのかもしれません。
・・・このような感じですので、サリンジャーの作品の中であまり知名度が高くない(気がする)のもうなづけけます。
グラース一家の物語を読みたい人は、『ナイン・ストリーズ』(普通に短篇集として楽しめます)から入って、そこ出てくる断片に触れて、『フラニーとゾーイ―』でより深く知って(村上春樹のズーイのほうでもいいけど)、それでシーモアに興味がわいたなら、『大工よ、屋根の梁を高く上げよ』に進むほうがよさそうです。
サリンジャーの作品には、一度読んだだけでは理解できないようなものも多い気がします。でも、何度読んでも新たな発見があるような、そんな作家なんだろうなと思います。

コメントを残す