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勝手に読書感想文。漫画も映画も含みます

「俗語」と「流行語」の違い

今回読んだのは、『俗語発掘記 消えたことば辞典』(米川 明彦 著)。表紙の装丁には「ガチョーン」「ヤンエグ」「ぬれ落ち葉」「チョベリバ」などと書かれているので、流行語を面白おかしく紹介してある本だろうと思っていましたが、実はかなりマニアックで学術的な価値が高い本だと感じました。

というのは、「まえがき」にも書かれているのですが、

「辞典」と銘打っているものに、エッセイ風の読物がしばしば見られるが、本書では、限られたスペースにできるだけ、上記のようなことばの辞典の要素をつめこんだ。中でも実際の用例は重要な情報を含むので、すべて筆者が収集した用例を、これでもかというくらい入れた。

「上記のようなことばの辞典の要素」とは、

いつから使われているのか、いつ頃まで使われていたのか、誰が使っていたのか、どんな使い方をしたのか、実際の用例や語感、また現在国語辞典に掲載されているのかどうか、類義語はあるのか、同様の造語法で造られたことばはあるのか

を指しています。

引用ばっかりで、すみません。でもここがこの本の魅力なんですよ。こんな流行語あったよね、で終わらせずに、〇年に出版されたこれこれという本でこんな使い方をされていた、というのがたくさん載っています。時代的に古い使用例なら、この頃にはすでに使われていた、ということになるし、新しい使用例なら、少なくともこの頃までは使われていた(今は誰も使わんけど)、みたいな情報となります。

各国語辞典にも独自のスタンスがあるらしくて、「古風」のような注釈付きで乗せる辞書もあれば、使われなくなった古いことばは載せないというポリシーの辞書もある。それに載っていないということは、すでに死語化していた可能性が高いという、判断基準にもなります。

そして実は私、流行語と俗語をごっちゃにしていたのですが、これらは異なるもので、流行した俗語もあれば、流行したわけではない俗語もあるというわけです。

流行語になったものには、俗語がたくさん含まれているので、前者の例は簡単ですよね。1984年には「まるきん」「まるび」が流行りました。かすかに記憶があります。お金持ちを「まるきん」と呼ぶのは、正式な用語法ではないので、これは流行した俗語である、と。

後者の、流行していない俗語というのは、なかなか思いつきにくいですが、本書にあげてある例だと、「バタンキュー」「おニュー」「お茶の子さいさい」などがあります。よく使いますよね。(え?)

さて、興味深かった見出し語をあげておきます。銀座をぶらぶら散歩することを「銀ブラ」と言いますが、今も使うんですかね? 私は銀座をぶらぶらしないので、使いようがありません。ぶらつくとしても町田くらいです。

なんと、「銀ブラ」は、大正初期にできたことばだそうです。これから派生した、「心ブラ」、「道ブラ」、「京ブラ」、「元ブラ」なんてものもあげてありました。それぞれ、心斎橋(大阪)、道頓堀(大阪)、京極(京都)、元町(神戸)だそうで、関西ばっかりです。「元町言うたら、横浜違うんかい!」「どこの人間やねん!」

重要なものが抜けています。「天ブラ」です。私が大学生だった1990年代には、普通に使われていました。入学して間もない頃に、「天ブラ行く?」と言われて、「え?」となった記憶があります。そうです、福岡の天神です。「天ブラ行く?」とマウントとってきたのは、1年早く福岡に出てきて(九州じゃそう言う)、浪人していたS君だったと記憶しています。浪人と言えば、親不孝通りですが、「親富孝通り」と改名されて、そういうのは違うんだよね、それじゃダメなんだよね、と思っていました。が、今 Wikiってみて、2017年に「親不孝通り」に戻っていたことを知りました。

九年経て知るふるさとの便りかな

この「天ブラ」のいいところは、「天ぷら」との掛け言葉になっている(?)ところです。「心ブラ」や「道ブラ」よりも、ワンランク上だと思います。つまり、天ぷらだけに「あがる」わけです。

本書には本当に「天ブラ」が載っていないのか?と思って、「て」のあたりを見てみますと、これがありました。

テンプラ

【意味】メッキした物や偽物を侮蔑して言うことば。また、偽学生。

ちょっと前に、ちょっと古い小説を読んでまして。学生が山登りをする話だったと思うのですが、けっこうクライマックスの場面で、たまたま出会った別の学生に、「君、テンプラだろ」みたいに言われて、愕然とするみたいなのがありまして、これを読んだときにテンプラの意味を知らなかったものですから、「?」ですよ。

終盤の重要な台詞で、「?」となってしまうようじゃ、ろくに小説も楽しめません。ということで、もはや誰も使わなくなったような俗語を知っておくことも、それになりに価値があるのではないかと思っています。

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