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勝手に読書感想文。漫画も映画も含みます

無自覚な差別意識を突いてくる、映画『爆弾』

会話が面白い映画が好きです。映画『爆弾』は、謎解き的なミステリーの面白さもさることながら、取調室で繰り広げられる会話戦が大きな見どころになっています。映画の結構な割合が、容疑者のスズキ タゴサク(佐藤二朗)と取り調べの刑事たち、等々力(染谷将太)、清宮(渡部篤郎)、類家るいけ(山田裕貴)との会話で占められています。

スズキは酒屋の自販機を壊すという行為で意図的に捕まり、その軽犯罪の取り調べの最中に爆破予告じみたことをします。その通りに爆破事件が起き、警察は重要参考人として取り調べを本格化しますが、おちょくった態度で次の爆破の時間や場所をクイズのようにほのめかすスズキに翻弄される、みたいな流れです。

最初は警察署の刑事である等々力が、その後、警視庁から偉そうな感じで清宮が派遣されてきて、所轄の刑事から仕事を横取りするみたいな感じ(『踊る大捜査線』でよく描かれているアレ)。でも清宮はまんまとスズキの術中にはまり、部下である類家との交代を余儀なくされ、トリの取調官は類家です。

清宮は登場人物の中でも格段に頭がよく、でも普段は変に目をつけられないように、その能力を隠しているようなタイプです。スズキはその点も見抜き、巧みにそこを突いて、失言や誤判断を引き出そうします。心理戦の応酬なのですが、こちらが押せば、向こうも押し返す。今どっちが主導権を握っているのかというのが目まぐるしく変化して、どうなるんだーと思っていると、現場でまた何かが起きる、みたいな。どう言ったらいいんでしょうか。言葉を吟味して、なんとか表現してみますと・・・、うん、「ちょー、やばい」みたいな感じです。

中日ドラゴンズの選手の名前を使ったカマかけが良かったです。こういうのって二重で仕掛るというやり方があるんですね。さっそく職場で使ってみようと思います。

スズキが単なる異常者として描かれているわけではないのが怖いところ。自分に共感しているところがあるんじゃないの、という挑発の仕方。このスズキを演じきっているのが佐藤二朗です。十円はげ、黄色く着色した歯、がさがさで汚れた指。汚いおじさん感(注:あくまで役の話です)がすばらしいです。終盤のシーンで、泣きそうな顔を見せたかと思うと、表情を崩し、そのあとに勝利を確信したような笑いをあげる、あの感じを出せる俳優が他にいるでしょうか。

取り調べをする3人の刑事たちの中での主役は類家ですが、類家に交代する前の清宮がスズキの策略にはまってしまう仕掛けのところもよかったです。ちょっと「トロッコ問題」っぽいやつ。「あなた、普段は命の重さは平等だとか言ってるけど、実は無意識のうちに差をつけませんか?」的な。無意識というのがポイントです。犯人から与えられヒントのうち何を重視して、何を軽視するかに、それが現れてしまうという追い込み方。

いくらきれいごとを並べたところで、命に差をつけているんじゃないの? しかも、自覚もせずに。という、スズキが投げかける問いの答えは簡単には見つからないのかもしれません。そう、最後の爆弾みたいにね。(うまいこと言うたった)

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