最近、「痛み」に関する本を読んでいます。
以前紹介した『慢性疼痛: 「こじれた痛み」の不思議 (ちくま新書 940)』(平木英人 著)は現場寄り・臨床寄りの本でしたが、今回の『痛覚のふしぎ ―脳で感知する痛みのメカニズム―』(伊藤誠二 著)は、サブタイトルにあるようにメカニズム寄り・機序寄りです。
第1章では、いわゆる心因性の疼痛の話も出てきますが、全般的には物理的(医学の分野では「器質的」というんでしょうか)な原因が明確な痛みのメカニズムが説明されています。
メカニズムを説明しようとすると、様々な体内の組織の名前だったり、酵素の名前だったり、伝達物質の名前だったりが登場するわけで、ちょっとハードルが上がる気がします。
高校生のときに、生物は理科Iでちょっと学んだ程度の50代には、なかなか厳しい部分もありました。とはいえ、ちょっと前に『カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書』(D・サダヴァ 著)のシリーズ3冊をざっと読んだ(決してすべて「理解」はしていないですが・・・)のは、基礎知識として役に立ちました。
そんな生物初心者にも、具体的なエピソードなんかはスッと入ってきて、理解できた気になったりするものです。アロディニアという、通常は痛みを感じない軽い刺激が痛みに感じられる感覚異常について説明していた箇所、タイトルは、
風が吹いても痛い毒キノコ中毒の患者
(略)
病院を訪問したときには患者さんは入院してすでに17日経っていましたが、人がベッドの側を通る風の動きでも痛みが生じるほどでしたので、
(略)
この食中毒の患者では、本来風の動きを察知する皮膚表面の産毛からの情報が痛みに変わるとともに、自律神経が活性化され、血管が拡張し熱が放出されることで熱く感じています。
まさにリアル「痛風」です。
風が吹くと、それが弱いものでも、ふわっと風が吹いたなというのは感じますよね。その感覚が、伝言ゲームのミスで、痛みだと解釈されたら・・・と考えると恐ろしいです。
ちなみに私は痛風経験者ですが、「風が吹くだけで痛い」というのはちょっと違っている気がします。正しくは、「ずっと痛い」です。
「風が当たるだけでも痛い」はおなじみの語源ですが、痛風 – Wikipedia を見ると、諸説あるみたいですね。
話を戻して、具体的な例で面白かったのが、日焼けしているときにお風呂(ぬるくても)に入ると、なぜ痛いのかというもの。
そら、ヒリヒリしているときにお湯に入れば、ビリビリっとくるだろ、みたいな気はしますが、そういうのではなく、
カプサイシン受容体がリン酸化されていない場合には、温度の閾値が42℃ではじめてカプサイシン受容体チャネルが開き、(略)カプサイシン受容体がホルモン感受性リン酸化酵素でリン酸化されると、カプサイシン受容体のチャネルの性質が変化して30℃付近からチャネルが開くようになり、(略)
日焼けすると、痛みを伝える受容体がリン酸化された状態になる、と。その状態だと痛みセンサーの閾値が下がってしまって、ぬるいお湯でもビリビリっときて、「あー、日焼け止め塗っておけばよかった」となるんですね。
出てくる用語をすべて理解できなくても、わかった気になれれば幸せです。

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