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勝手に読書感想文。漫画も映画も含みます

『菊次郎の夏』(1999年)

今さらながら、『菊次郎の夏』を初めて見ました。久石譲さんのテーマ曲は知ってて(普通に生活してたら絶対にどこかで聞いていると思う)、なんとなく内容も知ってて(母親を探している子供を、おじさんが連れて歩く、くらいのレベル)、子供が出てくるVTRなんかでこの曲が流れるだけで涙腺が緩む感じになっていました。映画も見ていなかったのに。

内容というか演出はちょっと変わっていました。途中で何度かチャプターのサブタイトル(しかもちょっとおちゃらけている)みたいなのが入ったり、コントっぽいやりとりのシーンがあったりとか。「だるまさんがころんだ」を裸でやるみたいな場面で、他のみんなはパンツ一丁なのですが、井出らっきょさんは、なぜか全裸で。そうです、期待通りです。なので、タコの絵で隠している映像の加工とか。普通の映画だったら、品格が下がりそうな演出を、あえてやっている気がします。たけしさんの台詞も、演技と素と芸人が混ざったくらいのトーンで、それがいいんだろうなと思いました。

菊次郎は子供のほうではなく、おじさん(ビートたけし)のほうです。子供は正男で、祖母と二人暮らしで。夏休みにたまたま見つけた母親の写真がきっかけで、母親に会いに行こうします。子供だけでは行けないので、知り合いの夫婦の旦那の菊次郎が子供を預かる形になるという展開。

菊次郎は、普通だったら子供を預けたくないタイプの人間なんですね。旅行のために奥さん(岸本加世子)からもらった資金を握りしめて、まっさきに競輪場に行ったり、そのあとクラブ(?)キャバレー(?) みたいなところに行ったり。しかも正男を連れて、ですよ。でも、奥さんは「うちの人、子供好きだから」みたいな感じで、菊次郎に正男を託しちゃうという、昔の下町っぽいおおらかさ。

ラストではなく、結構早い段階で目的を達してしまうというか、達せなかったというか、そういう状況になりまして、そのあとはダラダラと遊んで過ごす場面が続きます。でも、このダラダラ感は必要なんだろうなあと思います。やることないから、どうでもいい遊び(前述の裸だるまさんがころんだ的な)で時間をつぶす。大人になるとなかなか味わえない、永遠に続く夏休み、何の目的もないけど時間だけはある、みたいな感覚。

計画性皆無のめちゃくちゃな旅なんですが、結果的に正男にとってはかけがえのない経験になります。

旅の途中、正男はずっと、菊次郎のことを「おじちゃん」と呼んでいたんですね。旅の終わり、別れ際に正男は、

(離れた場所から呼びかける)
「おじちゃーん」

(振り返る菊次郎)

「おじちゃん、名前なんていうの?」

(少し照れながら)
「菊次郎だよ、バカヤロー。帰れ、はやく」

言葉数が少ない正男が、名前を尋ねるという、とても淡い、でも、とても深い愛情表現です。皆様の位置からは見えないと思いますが、今、私泣いています。さようなら。

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