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勝手に読書感想文。漫画も映画も含みます

宇野千代の二つの『幸福』

宇野千代のデビュー作『脂粉の顔』を読んだので(過去記事)、次もなるべく初期の作品を読んでみようと、ウィキペディアの著作の欄を見てみると、年代が一番古いものだと、

『幸福』(金星堂、1924年)

というものがありました。自治体の図書館で検索すると

『幸福』 宇野 千代/著 — 文芸春秋 — 1976 —

というのがあったので、これだろうと思い、借りてみました。なかなか年季の入った単行本でタイトルは『幸』です。表題作『幸福』の冒頭を引用すると、

いつでも一枝は風呂から上ると、ちよつとの間、鏡の前󠄁に立つて、自分の裸のからだを見る。タオルをてて、少し腰をひねるやうに曲げて立つてゐる。ぽつんとあからんだ肌をしてゐる。「似てる。」と思ふ。

出た!「やうに」、「思ふ」。それ以外もなかなかの歴史的仮名遣いです。「前」の字の「月」のところがちょっと違うところにも気付いてほしい。昔は、お空の月と肉月は違う書き方をしていたんですね。ためになったねー。

「ゐ」なんか、最近は

るるるるる
るるるるる
るるるゐる
るるるるる

こういう、速く見つけるクイズ(?)とかでしか見ないですね。

ちなみに、お若いあなたのために、上記には振り仮名を振りましたが、オリジナルの本文には振り仮名はありません。ちょっとハードルが高い。

巻末付近の発行日や価格が書かれているところも、

定價 七百八十圓

となっています。分かるとは思いますが一応、「定価 七百八十円」の旧字です。「圓」の字といえば、「三遊亭圓生 」を思い出しますね。

でも、ふと思ったんですね。発行の日付は「昭和四十七年十一月」となっています。「知らんがな」と思われそうですが、私が生まれる直前です。私が育ったころには、旧仮名遣いは、もはや使われていませんでした。じゃあ生まれた頃はまだ旧仮名遣いが一般的だったのでしょうか?

なんでも答えてくれるあいつに聞いてみると、その頃はもう旧仮名遣いは使われていないとのこと。「でも『定價 七百八十圓』とか書いてあるよ?」と聞くと、昔 出版したやつの復刻版とかじゃないか、なんてことを言う。ほんとだろうか。

初出一覧みたいなのがあったので見てみると、

收錄作品發表誌一覧

  幸福 新潮 昭和45年4月號
  (第十回女流文學賞受賞作品)

とあります。

あれ? そういえば、ウィキペディアに載っていた『幸福』には、「1924年」(=大正13年)と書いてあったけど、発表日付の昭和45年は1970年です。よく見たら全然違うじゃん。別物?

確かに、借りてきた『幸福』の主人公 一枝は「七十歳をとうに越してゐる」女性という設定です。1897年生まれの宇野千代は、1970年には70歳過ぎたくらいの歳ですから、自身がモデルだとすると、ぴったり一致します。

11軒の家を建てた話とか、離婚している点など、ウィキペディアに載っている宇野千代のエピソードと一致する話も、小説に盛り込まれています。

私が借りてきたのは70歳過ぎの頃の『幸福』でした。それでは、ウィキペディアに載っていた27歳の頃の『幸福』はどこにあるのでしょうか? こうして、私は今日も幸福を探し求めているのです。

さて、恒例の朝ドラ「ブラッサム」予想です。

とても信じられないことであるが、一枝は若いときから今日までに、家を十一軒建てた。

これは脚本家がドラマに盛り込みたくなるやうな話ぢゃあないかと思ふのですが、いかがでしょうか。

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