3度目のノミネートで晴れて受賞されました。予想が当たって嬉しいです。いや、予想したのではなく別の賞を勝手に作ったのでした。(過去記事:2026年上半期の芥川賞を予想・・・はせずに、賞を新設する)
ということで、『群像』2026年5月号を書庫へ戻す(=図書館へ返す)前に、掲載されていた『ゾンビ回収婦』をもう一度読んでみました。最近、映画『メメント』の主人公なみの記憶力になってきており、以前何を書いたのかがあやふやだったので、一度目に書いた感想文を読み返しました(過去記事:VRゲーム、AI、働くこと『ゾンビ回収婦』)。なるほど、そんなことも書いていたな、なつかしい。
二度目に読んでみると、まだまだ気になったことがありましたので、「『ゾンビ回収婦』の落穂拾い」と題しまして、前回書き忘れていたことを、うだうだと書いていこうと思います。ちなみに、落穂を拾うという行為と、ゾンビを回収するという行為が、かけてあるという点に気づいていただけたでしょうか。後付けなんですけど。
電車などで読んでいると、知らない言葉が出てきても簡単に調べることができません。スマホで調べたら? ってか。右手にGUNZO、左手に吊革、そして、心に花束(@阿久悠)という状態なので、スマホの余地はありません。ちなみに「GUNZO」という表記を見ると、タンバリンのGONZOが頭に浮かんでしまいます。しかも、それはかなり激しく踊っている映像なのです。すみません、誰もが思っているような、当たり前のことを書いてしまいました。
一回目に読んだときに、よくわからずにスルーしていたのが「ザ・グランド・口唇期ホテル」というネーミングです。なぜそのような名前にしたかという点だけでなく、そもそも「口唇期」という言葉を知りませんでした。なので、一般的な言葉なのか造語なのかもわからず。
今は手に何も持っていないので(心に花束はあります)、調べてみます。Wikipediaによると、フロイトが使っていた、生まれてから最初の発達段階をあらわす用語だそうです。
口は最初に経験する快楽の源で、生存のためにある。赤ん坊は本能的に吸う。口から満足を得ることで、赤ん坊には信頼と楽観的パーソナリティが発達する。時期については諸説あるがおおむね出生時から2歳までとされる。
なるほど、主人公の満たされない感覚が成長期に起因していることとかかっているようです。ゾンビを駆逐して楽しむ場所(そして果てたゾンビを回収する仕事でやりがいをえる場所)に、「口唇期」という名前をつけるとは、すごいセンスです。そっか、テディベアの「吸てつ」行動とも関連してくるのですね。
あと、これ。
【きのこと 名乗ったからには かごに入れ】
私は最初、頭の中で「かごに入れ」ではなく、「かごに入れ」と呼んでしまい、そうすると後半が七五調になるので、だったら最初のところも「椎茸と」とか「松茸と」と変えると俳句になるな、なんて思ってしまいました。でも、きっとこれは「いれ」ではなく「はいれ」なんだろうなと。これをあえて「いれ」と読ませるためには、こうしたらどうだろうか。
きのこだと 名乗ったお前を かごに入れ
最後に「一茶」とかなんとかつけておけば、見た人が深読みしてくれるかもしれません。秋のキノコ狩りの風景です、とかなんとか。
なんて考えながら、調べてみると、ロシアの諺でした。「おそ(略)」。
っていうか、タトゥーは最初謎のメッセージじみた感じで登場しますが、実はロシアとかの諸外国の諺だったりして、なんでそんなものが刻まれているのか、というのはよく読めば分かるのですが、一回目に読んだときは、私の中でしっかりつながってませんでした。電車の中で読んだため、1分に1回繰り出される、おっさんの咳払いや、正確に130BPMを刻む、隣に座っている人の貧乏ゆすりに気をとられていたのかもしれません。
そして、前半のVRゾンビ部分のほうが強く印象に残っていたのですが、実は終盤の病院らしきところの展開もけっこう厚いことに、今さらながら気づきました。VRと現実がごっちゃになってしまった人、という点は、まあそうなんですが、ちりばめられた要素が話を面白くしています。
食堂で他の患者がVRゴーグルをつけている場面。なんじゃそれ、くらいに思っていたけど、他の患者がそうなら、主人公も? となる。主人公はゴーグルを外したうえで治療を受けているのか、それともゴーグルをまだつけた状態なのか? ゴーグルをつけたまま、VRの世界で治療を受けているという可能性も。
現実の世界を見ているのにVRだと勘違いしているのではなく、本当にまだVRの中なのかもしれないというほのめかし。看護師は人間なのかNPCなのか。そこが曖昧なままだから、陽気に話す老医師に主人公が抱く感覚も普通じゃない。
だってほんとうに十日間一睡もしなかったんだとすればですよ、あなた死んじゃってたっておかしくないんですからねえ。アッハ! 医師はさきほどからわたしに頸部を狙われているとも知らず、やけにたのしげにしている。
こらこら、医者の頸部を狙うんじゃない。でも、医者を駆逐するVRゲームかもしれないしね。
まだまだ語りたい細かい仕掛けはあるんですが、長くなったので、そろそろゴーグルを外します。


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