以前、『私労働小説』を読んだのですが、その著者のブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読みました。
帯に「一生モノの課題図書」と書かれていて、たしかに課題図書にしたほうがいいと思うくらい勉強になりました。サッチャーが押しし進めた、小さな政府や緊縮財政の政策がどういう結果をもたらすのか。結果的に良かったとか悪かったとか、そんな話ではなく、予算を削ったことでこういうことも起きていたという話が出てきます。著者の個人的な体験、目にしたものだから、内容がすっと入ってくるし、記憶にも残ります。
著者は日本人、著者の配偶者(本の中で使われている言葉)がアイルランド人、その間の息子さんが書き留めていた言葉が本のタイトルになっている「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」というわけです。
この息子さんは裕福な家庭の子が多いカトリック系の小学校に通っていたのですが、その後、かなり多様性に富んだ中学校に通うことになります。カトリック系の中学校も選択肢にあるのに、なぜそっちを選ぶ!とちょっとモヤモヤしました。そのせいで、なんかひどい目にあったりする、いやーな後味の話はやだなあとか思ったんですが、読後感は明るいです。いや、いろいろ大変な目には会うのですが、この息子さんのポジティブな考え方で、むしろこんな状況にも希望があるという気持ちにもなってきます。
友達にリサイクルの制服をあげるエピソードがあって、その子は制服なんか擦り切れているし、替えを買うお金ももちろんないという家庭環境。著者がボランティアで修繕した服をその子に渡してあげたい。貧乏だからあげるというのは本当なんだけど、いかにもそんな感じで渡すのは気が引ける。向こうだってプライドがあるだろうし。
で、なんとか渡したあとに
「でも、どうして僕にくれるの?」
ティムは大きな緑色の瞳で息子を見ながら言った。
質問されているのは息子なのに、わたしのほうが彼の目に胸を射抜かれたような気分になって所在なく立っていると、息子が言った。
「友だちだから。君は僕の友だちだからだよ」
そう、それでいいじゃないか。他にどんな理由がいるというのか。
イギリスの階級社会がどういうものなのか。移民が増え人種や文化背景が多様になったり、貧富の差が広がったりすると、どんな感じになるのか。
いや、ほんとにひどい状況なんです。日本では考えられない(知らないだけかも?)。でも、なんというか、絶望とか悲劇とかそういう感じの本になっていないのが、この本のすごいところなんじゃないかと思います。

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