(アイキャッチ画像:By Itasan – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98530554)
文芸誌はほやほやの最新作が読めるのがいいですね。『すばる』2026年7月号に載っていた『喪失』は、現在(2026年8月)の時点で読める村田沙耶香さんのたぶん最新作です。
実は私は『コンビニ人間』しか読んだことがありません。でも、BSテレ東の「あの本、読みました?」に出演されていたのは見たので、オイコス(砂糖不使用の高たんぱくヨーグルト)に山ほど砂糖をかけて食べていて、朝井リョウさんに怒られたというエピソードは知っています。こういう話を聞くと、コンビニ人間の主人公の茹でただけの野菜を味をつけずに食べる話も、実話に基づいているのではないかと、ちょっと怖くなります。
『喪失』の冒頭です。
ある休日の午後、フォロワーと一緒に訪れ、ゲームに登場する森をイメージしたという巨大なロコモコを食べていたコラボカフェ以外の人類が全部滅亡してしまってから、だいたい20年が経ちました。
頭に入ってきません。情報が多すぎる? いや違う。後半のインパクトに比べて、前半の情報の重要度が低すぎます。「フォロワー」とか「コラボカフェ」とか、どうでもいい情報が邪魔をします。
でも、この小説って「SNSが好きで嫌いで」という特集の一つとして書かれたものなので、インターネットのサービスがきっかけで集まった人たちが災難に巻き込まれる(いや、逃れたのか)というのは、重要な要素の一つになります。自分たち以外の人類が滅亡しているので、インターネットやらSNSは使えなくなっている、という前提です。
なるべくネタバレは避けたいのですが、ここのシーンについてだけは書きたい。20年経って、98歳になったおばあちゃんが、何かやりたいことはないか?と聞かれたときの台詞。
「ツイの鍵垢にログインしてヲチ。ヲチスレのログ保存して必要あれば魚拓投下」
残念ながら、私は意味が分かりませんでした。「ツイ」はツイッターだろう、「魚拓」はウェブページを保存して残しておくサービスだろう、とは思うのですが、「ヲチ」が何か分からないため、おばあちゃんが何をしたいのか全然イメージがわきませんでした。(結局、検索して調べた)
インターネットが使えなくなって20年が経ち、他の比較的若い人たちはネット用語など使わなくなったタイミングでの、おばあちゃんのスラングばりばりの発言。これがツボでした。コントのシチュエーションにも使えそうです。
おばあちゃんが使うスラングですから、ちょっと古いものだったりするのでしょうか。今は「ツイ」は何になっているんでしょうか。ほとんどの人がパソコンやスマホを使うようになって久しいので、今どきのおばあちゃんにとってヲチが好きということは珍しくないのかもしれません。(さっそく使ってみる)
SNSとはどんなものなのか、人々にどんな影響を与えているのか。それはSNSのない世界を考えると、浮き彫りになるのかもしれません。そして、「ヲチ」という行為はインターネットやSNSがあるがゆえに生まれたもののように、普通は思います。しかし、インターネットができる前から、そしてインターネットがなくなってしまった20年後の世界であっても、「あの世界」は存在しているんじゃないか、という感覚を主人公は持ちます。それがどういう意味なのかは、『すばる』2026年7月号をご覧ください。(中の人?)
この同じ特集の中に、小砂川チトさんの小説も掲載されています。


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